REC 公式ブログ REC ソーラーシェアリングと太陽光パネル

ソーラーシェアリングと太陽光パネル

ソーラーシェアリングと太陽光パネル

ソーラーシェアリングが農業と共存する太陽光発電であり、太陽光パネルの下で栽培する農作物の生育に支障が無いような日射量の確保が必要になることから、発電設備の設計は非常に重要です。そして、日射量の確保などに大きく影響するのがどんな太陽光パネルを選定するかと言うことでしょう。

 国内でソーラーシェアリングの本格的な普及が始まった当初は、農林水産省が定めた営農型太陽光発電の一時転用許可に関する通知における「簡易な構造で容易に撤去できること」という規定が厳密に解釈され、単管パイプを用いた簡素な設備設計が多く見られました。そうした構造に加えて、なるべく農作物に対する日射量を均一化する、雨だれの被害も軽減を図るという設計コンセプトから、当日で言えば出力70~100W程度のスリム型の太陽光パネルが多く選定され、下記の写真にあるような藤棚式設計が採られてきました。

スリム型の太陽光パネルを用いた千葉エコエネルギー社のソーラーシェアリング

 私自身もこのコンセプトをどこまで追求できるかということに何年か取り組んできましたが、太陽光パネルの枚数が増えすぎて設置や管理コストが大きくなること、特殊設計の太陽光パネルになるため安価な調達や安定的な供給が難しいということもあって、野立ての太陽光発電に用いられる60セル以上の製品にシフトしていきました。日射量の確保については地表面に対する綿密な日射量シミュレーションによって作物への影響を最小化する配置を考え、雨だれについても架台の梁の構造を工夫することで対処し、スリム型を選定していた頃の目的を達成できる設計を実現したほか、設置費用の合理化も段階的に達成しています。

ソーラーシェアリングと太陽光パネル
ソーラーシェアリングと太陽光パネル

 現在は更にその次のステップとして、ソーラーシェアリングにおける両面受光型の太陽光パネルの採用を進めています。藤棚式の架台設計では、ソーラーシェアリングの設備下に十分な日射量が取り込まれ、架台自体の高さも確保されることから散乱光・反射光による太陽光パネル裏面の発電が期待できます。例えば、水田のソーラーシェアリングでは水が張られている期間は高い反射光が期待できますし、畑地などでも冬季の積雪による反射光が見込めます。また、千葉エコ・エネルギーの関連子会社であるつなぐファームのソーラーシェアリングでは、荒廃農地を再生利用するために果樹のポット栽培を行っており、そこに両面受光型の太陽光パネル+白色の防草シートを採用した下記の写真のような設計を採っています。こうした設計によって同じ遮光率でも高い発電電力量が得られるほか、太陽光パネル1枚あたりの発電電力量を増やすことで全体として太陽光パネルの枚数削減を図り、農作物に対する日射量を更に確保するといった構造も可能になります。

両面受光型の太陽光パネルを採用した自社グループの荒廃農地再生型ソーラーシェアリング

 一方で悩ましいのが、太陽光パネルの大型化です。ここ数年は過去にないスピードで太陽光パネルの大型化が進んでおり、今回の記事で取り上げたような藤棚式の設計には適さないようなサイズの新商品も見られるようになってきました。太陽光パネルの仕様が多様化していく中で、ソーラーシェアリングの設計も世界各国でその地域の農業にあわせたものが次々と開発されており、ソーラーシェアリング市場が拡大することに応じて太陽光パネルが製品としてどう移り変わっていくのかにも注目です。

筆者プロフィール


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氏名 馬上丈司(まがみたけし) 1983年生まれ。

千葉エコ・エネルギー株式会社 代表取締役。一般社団法人太陽光発電事業者連盟 専務理事。一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟 代表理事。

千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し、日本初となる博士(公共学)の学位を授与される。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策。2012年10月に大学発ベンチャーとして千葉エコ・エネルギー株式会社を設立し、国内外で自然エネルギーによる地域振興事業に携わっている。

専門家として、千葉市の温暖化対策会議専門委員会の委員やっ八千代市環境審議会の委員、太陽光発電設備の信頼性・安全性向上の技術評価およびガイドライン(営農型)策定に関する企画立案ワーキンググループの委員などを務めている。
太陽光パネルのREC公式ブログ 特別寄稿

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