REC 公式ブログ REC 2035年に向けた新たな温室効果ガス削減目標とソーラーシェアリング

2035年に向けた新たな温室効果ガス削減目標とソーラーシェアリング

ソーラーシェアリング

現在、日本国内で再生可能エネルギーに関する政策目標としては、2030年のエネルギーミックスで再生可能エネルギーの電源構成比36~38%という目標が掲げられています。これは、2030年時点での気候変動対策目標である2013年度比46%以上の温室効果ガス削減を達成するためのものともなっていますが、更にその先の2035年時点での気候変動対策目標が国際的に示されつつあります。4月15日~16日にかけて札幌で開催されたG7 気候・エネルギー・環境大臣会合では、そのコミュニケの中で以下のような一文が盛り込まれています。

We highlight the increased urgency to reduce global GHG emissions by around 43 percent by 2030 and 60 percent by 2035, relative to the 2019 level, in light of the latest findings of the IPCC. (G7 Climate, Energy and Environment Ministers’ Communiqué p.16)

 日本語の仮訳版では「我々は IPCC の最新の見解を踏まえ、世界の GHG 排出量を 2019 年比で 2030 年までに約 43%、2035 年までに 60%削減することの緊急性が高まっていることを強調する。」とされており、削減目標への合意というような表現はなされていませんが、2035年段階での温室効果ガス削減目標というのは従来よりもまた一つ踏み込んだ段階にあることが伺えます。現在の2030年時点で2013年度比46%という日本の温室効果ガス削減目標は2019年度比に換算すると35%でしかありませんし、「更なる高み」とされる2013年度比50%の削減目標でも40%相当であり、これでもまだ上記のコミュニケにある2030年時点の43%削減という数値に達しておらず、2035年時点の60%には到底たどり着けないような目標です。こうした中で、4月21日には環境省から2021年度の国内における温室効果ガス排出量のデータの確報値が公表され、対前年比2.0%増加となり、2019年度比では3.4%削減の状況にあります。(図1)

図1 国内の温室効果ガス排出量の推移
(出所)環境省 2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要より

 一方で、温室効果ガス削減のカギを握る再生可能エネルギーの導入量は、着実に増えてはいるものの増加率は2016年度以降で最も低い数値となっています。(図2)これは、国内の再生可能エネルギー導入を牽引してきた太陽光発電について、資源エネルギー庁による導入抑制策が効果を上げた結果と言えるでしょう。これから先、2022年度以降に再生可能エネルギーの比率が大きく増えていくような結果になるのかは、十分な再生可能エネルギー促進政策のない今の段階では見通せません。

図2 電源構成の推移


(出所)環境省 2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要より

 こうした状況下で、日本政府として2030年や更にその先の2035年に向けた温室効果ガス削減目標を上積みしていけるかどうかは不透明です。現在の削減目標では原子力発電所の再稼働も大きく見込んでいるため、エネルギー面での脱炭素化を進めるには再生可能エネルギーの導入量を更に伸ばしていくしかありません。そして、導入ポテンシャルと導入に必要なリードタイムを勘案すると昨今話題の洋上風力発電などでは到底間に合わず、やはり太陽光発電を伸ばしていくことが第一選択となります。例えば、2030年時点の発電電力量の10%相当を追加的に太陽光発電で賄うとすると、約80GWdc程度の太陽光発電設備が必要になります。これは、2021年度時点における国内の太陽光発電設備の総導入量に相当しますから、それだけの投資と設置場所を確保しなければなりません。そして、少なくとも立地という観点ではソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が貢献する必要が出てくるでしょう。農業生産に必要な日射量を確保しつつソーラーシェアリングを導入するとなると、1GWdcあたり1,100~1,200haが必要となります。この数値感を目安に、需要地の近傍にある農地を活用したソーラーシェアリングの導入によって、更なる再生可能エネルギー導入量の確保を図ることが可能になるはずです。
 農地において持続可能な農業生産とエネルギー生産を両立し得るのがソーラーシェアリングの大きな特徴ですが、まだ国内ではそうした目線での政策的な方針が整理されていません。もしも日本政府が更なる温室効果ガス削減目標を積み上げていこうとすれば、そうした議論も行っていくことになるだろうと思います。

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筆者プロフィール氏名 馬上丈司(まがみたけし) 1983年生まれ。


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千葉エコ・エネルギー株式会社 代表取締役。一般社団法人太陽光発電事業者連盟 専務理事。一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟 代表理事。

千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し、日本初となる博士(公共学)の学位を授与される。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策。2012年10月に大学発ベンチャーとして千葉エコ・エネルギー株式会社を設立し、国内外で自然エネルギーによる地域振興事業に携わっている。

専門家として、千葉市の温暖化対策会議専門委員会の委員や八千代市環境審議会の委員、太陽光発電設備の信頼性・安全性向上の技術評価およびガイドライン(営農型)策定に関する企画立案ワーキンググループの委員などを務めている。
ソーラーシェアリング 馬上丈司プロフィール

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