REC 公式ブログ REC ソーラーシェアリングと畜産

ソーラーシェアリングと畜産

アンモニア 耐性 太陽光パネル 施工例

 ソーラーシェアリングの設置場所が水田・畑・果樹園・牧草地・園芸施設など多様化する中で、近年は畜舎への太陽光パネル設置も進んでいます。畜舎における太陽光発電導入は、広義のソーラーシェアリングの一つであると言えますが、昨年来のエネルギー価格の上昇や災害時における停電への備えとして自家消費型を中心に導入が進んでいます。特に畜産では停電による様々な機器停止が家畜の生命に直結する問題ともなりかねないため、従来から非常用の発電機を備える事例もありましたが、近年はコスト面も勘案して太陽光発電を含む再生可能エネルギーが選択されているようです。畜舎では電気を含めて大量のエネルギーが常時使われる状況にあり、家畜の生命維持に関わるようなもの、例えば酪農でいえば夏場の大型扇風機・換気送風機、冬場のヒーター、他にも搾乳機やバルククーラー、バーンクリーナーなど電気で稼働する機械が沢山使用されています。また、畜舎の屋根に太陽光パネルを設置することで遮熱効果が期待され、特に気候変動によって夏場の気温上昇が著しくなってきている中で、こうした遮熱が家畜の生育にプラスの効果を与えることもあります。

 広く畜産という観点では、畜舎の屋根だけでなく家畜の放牧場などに太陽光パネルを設置するような事例も出てきており、牛、豚、鶏、羊、山羊などの家畜動物をソーラーシェアリング下で放牧している事例が国内外で生まれています。単純に屋根代わりとして活用したり、夏場の放牧場における日よけとしての効果も見込んだりしての設置が行われており、これからは牧場などにソーラーシェアリングがある風景というのも珍しくなくなってくるかも知れません。また、放牧地などにおける牧草の生育にも、ソーラーシェアリングによる適度な遮光が貢献するという研究結果が出てきています。近年は気候変動の進行によって日本国内でも夏場の暑さがこれまでにない水準にまで上がってきており、一定の遮光環境がここでも求められるようになるでしょう。では、このような畜産の現場にソーラーシェアリングを導入していく場合に、太陽光発電システムではどのような点を考慮する必要があるのでしょうか。

 畜舎に設置する場合には、屋根置きとして屋根材並びに建物自体の強度を考慮した設計ということになりますし、放牧地や牧草地などであれば地形や牧草の生育に必要な日射量を確保出来ることがベースになります。下記のイメージ図は、過去に放牧地などにおけるソーラーシェアリング設計としてリリースしたもので、特に乳牛などの大型家畜の放牧を想定した架台になります。日本以外でも、Agrivoltaicsとして設置されている太陽光発電設備の中では、このような様々な地形における家畜放牧モデルが出来ています。

ソーラーシェアリングと畜産

放牧地・傾斜地用のソーラーシェアリング架台設計

こうした架台設計以外に、畜産における太陽光発電事業で重要になるのは太陽光パネルの選定です。畜舎や放牧場といった場所では景観が重要視されることがあります。太陽光パネルの設置角度や設置方法、またセルの色というのも景観に影響する要素です。他にも、太陽光パネルにおいて実施される試験の中でアンモニアガスに対する腐食耐性試験があり、畜舎などにおいて長期間の糞尿から発生するアンモニアに曝露された場合における耐久性(アンモニア耐性試験証明書:IEC規格61701)の有無を確認することがあります。通常の屋根置きや農地におけるソーラーシェアリングで設置する環境とはまた違った環境要因となるため、こうしたものに対する耐性の確認というのも畜産・畜舎におけるソーラーシェアリングでは重要になるでしょう。

 冒頭で述べたように畜産・畜舎は産業としてエネルギー需要が大きいこともあり、またそのエネルギー供給が途絶することも問題となるので、再生可能エネルギーを導入していくことが今後より重要になると考えられます。ソーラーシェアリングの一形態として、これからも注目していきたい分野です。

RECのアンモニア耐性太陽光パネルは REC Alpha seires,TP5 Series 

RECのソーラーシェアリング関連記事 ソーラーシェアリングに向いているソーラーパネルの条件 

筆者プロフィール氏名 馬上丈司(まがみたけし) 1983年生まれ。


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千葉エコ・エネルギー株式会社 代表取締役。一般社団法人太陽光発電事業者連盟 専務理事。一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟 代表理事。

千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し、日本初となる博士(公共学)の学位を授与される。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策。2012年10月に大学発ベンチャーとして千葉エコ・エネルギー株式会社を設立し、国内外で自然エネルギーによる地域振興事業に携わっている。

専門家として、千葉市の温暖化対策会議専門委員会の委員や八千代市環境審議会の委員、太陽光発電設備の信頼性・安全性向上の技術評価およびガイドライン(営農型)策定に関する企画立案ワーキンググループの委員などを務めている。
ソーラーシェアリング 馬上丈司プロフィール

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