日本政府の中期的なエネルギー政策方針である第6次エネルギー基本計画の議論が佳境に入り、2030年に向けた国内の再生可能エネルギー電源市場の方向性が決まろうとしています。これまでのエネルギーミックスと言われる2030年を目標年次とした電源構成から大きく変化し、再生可能エネルギー電源は36%~38%を目指すこととなっています。図1は資源エネルギー庁による2030年の再生可能エネルギーの導入見込み量ですが、表の右端にある「現行ミックス水準」に比べて、太陽光発電・陸上風力発電・洋上風力発電が大きく増加していることが分かります。
特に太陽光発電の増加率が大きくなっているように見えますが、FIT制度による当初の導入増加分が非常に大きかったことが影響しているものの、2020年代の増加率は政策強化シナリオでも劇的とは言えません。また、「野心的水準」として200億~400億kWh分が別枠になっていますが、事業開発に必要なリードタイムを考慮すると2030年に向けてこの部分を担えるのは実質的に太陽光発電だけだと言えるでしょう。そうなると、太陽光発電の導入目標量は130GW程度を目指していく必要があります。
では、2030年という目標年次から逆算したときに、どうすればこの目標数値を達成していけるのでしょうか。図2は資源エネルギー庁による太陽光発電の市場再構築を目指した場合の導入イメージです。2020年度頃までは「事業規律強化」の名の下に、資源エネルギー庁では太陽光発電市場の縮小を良しとしてきましたが、2030年に向けた再エネ目標の引き上げによって軌道修正を余儀なくされた形です。これはあくまでも「イメージ」ですが、仮にこのイメージの通りだと追加的導入量は40GW以下にとどまるため、政策強化ケースの100GW達成すら覚束ない数字感です。
もし野心的水準まで含めて本気でこの再エネ導入目標を達成していくとすれば、少なくとも2022年度以降の単年度導入量を上記の2倍にする必要があります。あるいは2025年度までのなるべく早いうちに単年度導入量を8GWペースに乗せ、それを2030年まで継続するようなシナリオが必要になりますが、第6次エネルギー基本計画の議論でも具体的にどうやって太陽光発電の導入を加速化させるかには言及されていないのが実情です。
一口に太陽光発電といっても設置形態は様々ですし、屋根置き・野立てから営農型や水上型まであらゆる場所に導入していかなければ、日本国内で再生可能エネルギーを大幅に増やしていき、気候変動対策を進めるという政策目標は達成されません。これまでの政策議論の経過から、太陽光発電の市場はこれから更に拡大していくことは確実だと言えますが、それが具体的にどのような形で進めていくことになるのか、政策的な支援はどんなものが出てくるのかはこれからですので、第6次エネルギー基本計画が政府で閣議決定されてからの議論を注視していく必要がありそうです。
筆者プロフィール | |
氏名 馬上丈司(まがみたけし) 1983年生まれ。 千葉エコ・エネルギー株式会社 代表取締役。一般社団法人太陽光発電事業者連盟 専務理事。一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟 代表理事。 千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し、日本初となる博士(公共学)の学位を授与される。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策。2012年10月に大学発ベンチャーとして千葉エコ・エネルギー株式会社を設立し、国内外で自然エネルギーによる地域振興事業に携わっている。 専門家として、千葉市の温暖化対策会議専門委員会の委員やっ八千代市環境審議会の委員、太陽光発電設備の信頼性・安全性向上の技術評価およびガイドライン(営農型)策定に関する企画立案ワーキンググループの委員などを務めている。 |